逃げるは勝ちか?




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小学校の頃、僕は“神童”と言われるほど野球の才能に恵まれており、
所属していたスポーツ少年団のホームラン、打率、打点など、記録という記録を塗り替えていった。

誰もが「こいつはプロになるに違いない」と期待を集めていた。
中学校に上がるも、学校の野球部には所属せずシニアリーグという硬式野球のチームに入った。
そこには県内のスゴイ選手が集まっていたのだが僕の勢いは止まらず一年生大会で優勝を果たし、
周囲の期待はますます高まった。
練習は過酷だった。いつも行きたくなかった。そんな時にヒザを故障して手術した。

ケガ自体は大したことはなかったのだけれど、僕はこれを逃げの口実にした。
父にチームを辞めたいと言ったとき、父は、「後悔しないように」と言った。
当時の僕は深く考えず「後悔はしない」と言ってチームを辞めた。

それでも野球は続けた。中学校〜高校と野球部に所属し、一生懸命に練習に取り組んだが成績はいまいち。
スター街道を外れたことを自覚していたが認めたくなくて走り続けた。

“あのとき逃げなければ…”と、何度も後悔した。そして高校の野球部を引退後、野球から逃げた。

もう一度、スターの輝きを取り戻したいと、大学時代はラグビー部に所属し、4年間練習に打ち込んだ。
結果はもちろんいまいち。大学デビューのやつがスターになれるほどラグビーは甘くない。

大学卒業を前に、コピーライターという仕事があることを知った。
もう一度、夢を追いかけようと大阪へ移住した。そして今に至る。

それからも逃げ出したいと思うことは何度もあったが、逃げることが怖かった。
また道をはずれてしまうのではないかという思いがいつも頭をよぎった。

僕のこれまでの人生、あのとき逃げ出したからこそ出会えた人もたくさんいたし、
あのとき逃げ出したからこそ、楽しい思い出もいっぱいできた。
逃げることは悪くない。そう思いたい。

あの時に逃げ出したから今がある。今が幸せなら、それでいいのではないか自分。